賃料減額ガイドライン

不動産 その他

賃料減額ガイドラインについて、簡単に・分かりやすく解説

2022年2月1日

 

室内の不具合により、賃料減額される可能性有り

今回はかなりニッチな回です。

賃借しているお部屋のどこかに不具合があった場合、内容によっては家賃の減額が出来るというお話になります。

民法では、この家賃の減額について以下のように定めています。

民法第611条(賃貸物の一部滅失等による賃料の減額等)

民法第611条(賃貸物の一部滅失等による賃料の減額等)
1. 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
2. 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

この611条は2020年の民法改正によって内容が変更となりました。

元々は「賃料を減額請求できる」とされていたのですが、改正民法により「賃料は減額される」となりました。

借主にとって有利な内容に変わったものの、実際はどの程度賃料が減額されるかについては、改正民法は明確な基準を定めておらず、実務的にも曖昧な部分がありました。

この点について、適切に対処していくことが求められる事を鑑み、「公益財団法人 日本住宅管理協会」が、減額割合の目安となる「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」を作成しました。

不動産会社側としても借主側としても、このガイドラインが目安になるので大変嬉しいと思いつつ、借主側としてはなかなか分かりづらい部分があるのかなと思い、この内容をまとめることにしました。

この記事ではの賃料減額ガイドラインを参考に、初めての方でも分かりやすく出来るだけ簡単にお伝え致します。

注意

賃料減額は民法で定められているものの、このガイドライン自体は法令で定められているわけではありません。

「公益財団法人 日本住宅管理協会」が取り決めたガイドラインとなりますので、必ずこの考えや目安が使用されるわけではありません。

貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドラインの内容

賃料減額ガイドラインの見方

「貸室・設備の不具合による賃料減額ガイドライン」

「貸室・設備の不具合による賃料減額ガイドライン」日本賃貸管理協会HPより

賃料減額ガイドラインは大きく分けてA群・B群の二つに分けて考えます。

「A群はライフライン」「B群はその他設備類」とお考え頂ければ問題ありません。

まずは、不具合が生じた場合は「ライフライン系かそれ以外か」を考えましょう。

ライフライン系であれば必然的にA群に該当しますので、B群は考えなくて大丈夫です。

逆にライフライン系でなければ、A群はスルーしてB群を見ましょう。

賃料減額割合について

該当する箇所が見つかったら、続いて「賃料減額割合」を確認します。

これは、使用できない期間にどれくらい賃料を減額できるかの目安パーセンテージが記載されています。

例えば、

「電気が使えない」となった場合、使えない期間は賃料が40%減額となります。

「ガスが使えない」となった場合、使えない期間は賃料が10%減額となります。

この割合は、生活において必要度に応じて変わってくるようです。

電気が使えないと、家で充電も出来ないですし、夜は完全に暗くなって不便極まりないですよね。

でもガスが使えないだけであれば、ご飯は冷凍もので済ませられますし、お風呂は銭湯に行く等、電気と比べて対応出来なくはありません。

そういったところで、減額割合は変わってきます。

免責日数について

ただ、使えないor故障したからと言って、すぐのすぐに対応してくれるわけではありません。

どの場合でも「免責日数」というものかあります。

免責日数とは、物理的に代替物の準備や業務の準備にかかる時間を一般的に算出し、賃料減額割合の計算日数に含まない日数を指します。

「水が出ない」であれば、免責日数は2日。

「トイレが使えない」であれば、免責日数は1日。

長いものだと「 雨漏りによる利用制限」というもので、免責日数は7日となっています。

被害を受けている側としてはたまったものではありませんが、雨漏りになると、原因を探して対応策を検討・実際に直すまである程度時間を要してしまうので、免責日数が長くなっています。

減額賃料の計算方法

「水が使えない」となった場合を考えてみましょう。

この場合、賃料減額割合は30%・免責日数は2日となります。

□ 2日以内で直った場合

もし故障から2日以内で修理が完了した場合、免責日数以内となりますので賃料の減額はありません。

□ 5日で直った場合

この場合は免責日数を上回っておりますので、賃料減額が発生となります。

・賃料100,000円と仮定

賃料100,000円 ×  減額割合 30% × (故障期間5日 - 免責日数2日)/故障月日数(4月であれば30日で割る)

→ 100,000円 × 30% × 0.1 = 3,000円の減額

(1日あたり1,000円)

となります。

ガイドラインの注意事項

入居者の不注意or無理な使い方をして壊してしまった場合は減額対象となりません。

→ 入居者のせいで故障したものについては、入居者の費用負担で直してくださいということですね。

東京都の物件に入居する場合は、契約時に「紛争防止条例に基づく説明書」という書類にて説明があります。

それ以外の道府県だと契約書の条項内に記載されているかと思います。

台風などの天災等の「貸主側・借主側どちらの責任によらない場合により発生した故障」は原則として減額対象となります。

ただ、この減額対象となるのは、天災により部屋の設備に問題が発生した場合となり、供給元で問題が起きて部屋の設備が使用できない場合は減額対象となりませんので注意が必要です。

例えば、ガスの場合を考えてみます。

地震が起きて建物・部屋側のガス管に問題が起きてガスが使用できなくなってしまった場合、これは減額対象として考えられます。

逆に地震が起きて建物・部屋側のガス関係箇所に問題はないものの、供給元(東京ガス等)でガスの供給がストップした場合、これは減額対象となりません。

これは、建物・お部屋自体に問題がない為です。

借りている部屋が全壊or半壊等、何かしらの理由で住めなくなった場合は、このガイドラインの適用範囲ではないとされています。

継続して住むことを前提に修理して、それによる賃料の減額を行うわけですので、住めなくなった場合はそもそもこのガイドラインが出てくる幕は無いということですね。

ちたみに、どの契約書にも「建物が全壊or半壊して使えなくなった場合、当然に契約終了します」と記載されています。

さいごに

今回は賃料減額割合についてみていきました。

もともと契約書を説明していた側としては、これらの条項は実際の契約書の内容だけだと分かりづらいなーと思っていたので、このガイドラインはかなりありがたいですね。

法律で定められている書類ではありませんが、このガイドラインがあることによって、有事の際にはこのガイドラインを参考に貸主・借主で話が進められれば、賃料減額についての話し合いは比較的スムーズに進むのかなと思います。

個人的には、「ガスが使えない」と「お風呂が使えない」減額割合が同じ10%なのはどうなのかなと思ったりしておりますが...。(笑)

参考資料

日本賃貸住宅管理協会

・「貸室・設備の不具合による賃料減額ガイドライン」

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